第1章 はじめまして。こんにちは(太宰治)
与謝野女医からちゃんが起きたと言われ、私は医務室に入った。ちゃんは虚ろな目で一点をじっと見ていた
「ちゃん」
名前を呼ぶとちゃんの瞳が私に向き、
『誰...ですか?』
え?
「ちゃん...?冗談は良くないよ」
声が震える
解っている。ちゃんの言っていることが嘘じゃないなんて
でも、認めたくない
『あの...本当に解らないんです』
違う
そんなに苦しい顔をさせたい訳じゃない
『あの...大丈夫ですか?』
「...私は」
言葉が出ない。何時もなら上手い言葉が一つや二つポンポンと出てくるというのに
「ごめん」
『えっ!あのっ!』
バタン
私は医務室から出てしまった
「ちゃん....」
結局この日はこれ以来ちゃんに会わなかった
そしてちゃんは病院に移った
明日はちゃんと云おう
そして謝ろう
そう決めてたのに
『誰...ですか?』
ちゃんは1日ごとに記憶を失っていた