第2章 逃走編
「一般市民のアンタにとって、まさに青天の霹靂。使命感を抱く理由が俺にはひとつも理解できない」
落としそうになったチョコを口に押し込みながら、訝しげな顔をする。
なんだろう。すっごくすっごく思ったことが顔に出る人だなぁ。
「やるからには、やってやりますよ!だってもう、やるしかないんだもの。ちがいますか?」
「…意外と、度胸あるなお前」
「女は度胸です」
グッと親指を突き出して見せた。
本当は怖いけどさ、女には腹をくくらないといけない時ってけっこうあるもんです。
ずっと眉間にしわが寄っているメロの目元が、一瞬、フッと緩んだ気がした。
「それでですね、すっごく気になったことがあったので教えて欲しいんですけど」
「応えられることなら応える」
「あの怖いオジサンたちは、メロの友達ですか?」
だって、なんか、ちがうんだもの!メロも顔怖いよ?でもさ、集団ってみんな同じものの集まりで、同じオーラしてんじゃん?でも、なんかちがうんだもの!
「トモダチ?」
メロは、不思議な表情で応えてくれた。
「…お前、よくわからないことを聞いてくるな。よく言うなら同盟相手。悪く言えば、駒。お互いにな」
「駒」
「アイツらはチャイニーズマフィアだ」
マ フィ ア !!!
ヤクザ的なにおいは感じてましたよ!感じてましたけど、やっぱり~~~
「お前、思ったこと、全部顔に出るな」
「いや、そう言うあなたもけっこう顔に出てますよ」
「出てるんじゃない、出してるんだ。あんまりにも突拍子もないことを言うお前の言動にあきれて。
もう疲れたから話しかけてくるな」
どうなんだか。
もうなんにも応えてくれなさそうなメロに期待するのはやめ、私は大きなモニターに視線を移した。
モニターにはロサンゼルスの映像が映し出されている。英語なので少しはニュースが聞き取れた。
ロサンゼルスの高層ビルが、何者かに爆破された、というニュースのようだった。
私がちょうどニアと会った時刻あたりだろうか。そこから怒涛の事件に巻き込まれたので、大きな事件だったが、ぜんぜん知らなかった。