第2章 逃走編
担がれて外に出た後、バイクに乗せられ、40分くらい走っただろうか。
つれてこられたのは廃工場だった。
とにかく多国籍な感じの怖い顔がわんさかいて、広東語や英語が飛び交っている。
少しの英語と中国語しか理解のできない私には今、何が起こっているのか分からない。ただ、どの怖いオジサンも私を上から下までジロジロと見てくる。
リュークより、こわいよぉぉぉ
と小さい声で言いながらリュークを見ると、『え?そうなの?変わってるなオマエ』と言われた。
「那美、こっちに来い」
黒いフードを取ったメロが私を呼んだ。
私はダッシュでメロの元に走った。
呼ばれるままに、大きなモニターのある、薄暗い洋間に入り、ゆっくりと扉を閉じた。
「あの…、私は何をすればいいでしょうか?」
と、私が聞くと、
「…俺と一緒に潜入捜査をしてもらう」
と言って、真っ黒い修道服のような制服を渡された。
「せ、潜入…捜査…」
「死神の居場所を探し、容疑者を絞り、あぶりだす」
たしか、ノートは新興宗教の幹部が持っているという話。
「新興宗教に、入会…ということですか?」
「そうだ」
なんかたいへんなことになってしまった…(あれ。これもう何回言ったっけ)
でも、私にはなんの拒否権もない。とにかくやるしかないんだ。
ノートには、『所有者』が必要だそうだ。
しかし、その『所有者』はもれなくみんな不幸になる。怖い顔のオジサンの一人が『所有者』になって、リュークと『目の契約』なるものをしていた。これはなんなのかよく教えてくれなかった。
「メロさん。あの…」
「メロでいい。長い」
メロはチョコレートを噛み砕きながら、睨んだ。顔怖いと思ったけども、オジサンたちに比べたらぜんぜんだった(慣れた)。
「それじゃあ、メロ。私、やるからにはがんばって使命を全うします。よろしくお願いします」
そう言ってまっすぐにメロを見ると、メロはぽかんとした顔をして口に入れたチョコレートを落としそうになった。