第2章 逃走編
「…もう少し、順序立てて分かりやすく言ってくれ」
あきれたように言われた。
話しかけない方がいいかな?手術のあとだし、疲れが出ているだろうから…そう思って黙って見つめていると、
「言いたいことがあるなら言えばいい。だからその顔はやめろ」
でも、声にも元気がないしあんまり疲れさせることもしたくなかった。
だけど、もしかしたらそろそろ『あのひと』がくるかもしれないので、それだけは。
「メロ、三国会のボスに会ったところまでは記憶にありますか?」
「いや…ノートで狂った一味に撃たれてからは記憶がない。三国会のボスが俺を助けたのか?」
「うん…あの、それで一回、ノートを取られてしまって。返してもらえたけど…」
そう言ってメロにノートを渡した。
メロは舌打ちし、ベッドを一度強くたたいた。
「…ごめん…。なにも、できなくて」
「お前が謝るな。自分自身に腹が立つんだ」
そう言ってメロは腕に刺さっていた点滴を引き抜いた。
「メロ、…まだ…」
だめだよ、と言ったところで聞きやしないか、と思い直して私は黙った。
「おや、お早いお目覚めのようだな、メロ。何度か仕事で縁があったが、顔を合わせるのは初めてだな」
いつの間にか、王がドアの前に立っていた。
「お前にいくつか聞きたいことがある」
そう言って、歩み寄ってきた王はベッドの近くの椅子に腰を下ろした。
「…応えられるものなら応える」
借りが出来てしまった我々には、さすがに黙秘するわけにもいかず、王の言葉に耳を傾ける。
「お前たちは聖・シリウス会にあるノートを追っているんだな?」
「そうだ」
短刀直入の質問だったが、間髪いれずメロは答えた。
「俺は、ノートに興味はない。あったところで諸刃の剣、無用の長物だ。
ただ、うちに手を出してきた教会には、きっちりと『お返し』をしたいと思っている。
そのために、手を組まねえか?」
思いもよらぬマフィアのボスからの協力志願だった。
メロは少し考えている様子だった。
「俺はどっちでもいいんだ。どっちにしても『お返し』をしてやることには変わりはないんだからな。
ただ、そっちのやり方の邪魔になったら悪いだろ?そのための共闘、と取ってくれてもいい」