第2章 逃走編
緊急手術が行われ、ただひたすら待つ私。王もいつのまにかどこかにいなくなっていた。
「マット…大丈夫かな」
本当は今日にでも教会に潜入して、内部調査を開始したかった。長引けば長引くほどマットも、ニアたちだって辛い状況になってくる。
オぺ室の前でただ悶々と待っているのも辛かったので、私は久しぶりにスマホを見てみた。
家族からの着信、友人たちからの着信が百件近く入っていた。
なんて、答えようかな…。
すごく悩んだ挙句、ラインで『とりあえず生きてます』とだけ送った。
手術は無事成功し、麻酔が聞いているのか、メロは穏やかな表情で眠っている。
ずっと危険な場所を動きっぱなしなんだから、少しは休んで欲しかったのでちょうどよかった、とも思った。
高層階の病室は静かで、私も少し眠くなってきた。でも、メロが起きるまでは起きていたかった。
どこに敵がいるかわからないし、誰が敵かもわからない。
そんな決心をしながら、スマホでニュースを見ていると、ノックの音が聞こえた。
驚いて一瞬スマホを落としそうになったが、そこにいたのは王だった。
「ほら。お前らのだろ」
そう言って渡されたのはデスノートだった。
「…なんとなくわかった。何が起こっているのかが。どうやってうちのやつらが殺されたのかもな」
いつのまにかリュークが戻ってきていた。
いままでどこに行っていたのだろう。
しかし、この人。なんでデスノートを返してくれたんだろう。
「今はお前も休んでおけ。ここは安全だから」
それだけ言って、王は去っていった。
しばらくがんばって起きていたけども、いつのまにか眠ってしまっていた。
柔らかな手の感触を頭に感じた気がした。
ふっと目を覚まし顔を上げると、メロが上半身を起こしてこちらを見ていた。
「メロ!よかった!」
なんか言いたいことがいっぱいあった気がしたけど、それしか言葉が出てこなかった。
「ああ…すまなかった…」
ぼそりとつぶやくようにそう言った。
「…あの、私、三国会のボスに少し話してしまって、あと、ノートも一回とられてしまって…返された」
やっと言いたかったことを思い出して、一気に全部言った。