第2章 逃走編
チェックアウトの時間になっても、メロは帰ってこなかった。
メロの携帯の番号も知らないし、とりあえずホテルの外に出るしかなかった。ホテルの外に出ると、ずいぶん都会に戻ってきたことがわかった。昨日までは、そこそこ寂れた町にいたんだけども。
高層ビルを見上げていると、スーッと私の前に黒塗りの高級車が停まった。
え?もしかして教会の人?と思ってもう一度ホテルに逃げ戻ろうとすると、真っ黒なドアウィドウが開き、少し陽気な声で声をかけられた。
「よぉ、お嬢ちゃん。誰かお探しかい?」
中国語訛りの日本語で話しかけられた。
「いいえ、探してません!」
「おやおや、そんなはずないんだがね。ここにいるのは君のツレのはずなんだが」
振り返らず答えると、男はサイドドアを開けて見せた。
私は立ち止まり、振り返ると、そこにはメロが横たわっていた。
「メロ!!」
走り寄ると、話しかけてきた男に思いっきり腕を引っ張られて車に乗り込む形になった。
「出せ」
男の命令で、静かに車は発進した。
メロは負傷していた。
肩を撃たれたらしく血が溢れていて、意識もないようだ。
酷い怪我だ。私みたいな何も分からないヤツが触ったりしたら返って悪化させてしまうかもしれない。
「…メロは、助かりますか?」
「ああ。だけど、それはお嬢ちゃん次第だね」
「私に。なにができますか?」
「お嬢ちゃんの知っていること、教えてもらえればたすけてあげてもいい。
俺は王(ワン)、三国会のボスだ」
男はそう言って、かけていたサングラスをはずした。
私の知っていること。
どこまで話すべきだろう。でも、この人に嘘は通じなさそうだと思った。