第2章 逃走編
三国会。
香港を拠点とする巨大マフィア。日本で平凡に暮らしている私すらも聞いたことがあるくらい有名なのです。
聖・シリウス教。
キリスト教派生の新興宗教。この中の誰かがデスノートを持っている。現教皇はロドヴィーゴ・ドミニッチ。本名で間違いないそうだ。マカオで毎年宗教集会が行われている。
「うわぁ…これ全部読むのぉ?しかも全部英語じゃないですかぁ!」
メロに渡されたのは、制服だけじゃなくて分厚い聖典もあった。
入会するに当たって読むことになった。翻訳するのだって、どれだけ時間かかるんだろう…。携帯で一生懸命調べながらの翻訳。地獄ですよ、ほんとに。
古びたホテルの一室で、今日は一泊することができた。
野宿する日もあるので、今日はラッキーだ。ちなみにお湯はでない。風呂に入りたい。
私が一人でぶつくさ言っている間も、メロはチョコレートを食べながらテレビをジッと見ている。
バイクで移動中にもラジオでも聞いていたんだけど、例の聖・シリウス教のありがた~いお言葉が世界放送されている。
「わが、聖・シリウス教に、神より遣われし『キラ』が我々の教えの正しさを証明しつつあります」…とかいう内容らしい(メロから聞いた)
その世界放送が始まって以来、一気に信者が増えたそうだ。今なら潜入もしやすそう。
そんなことを考えながら翻訳していると、突然扉をたたく音がした。
ベッドに寝転がっていた私はガバッと起き上がって、メロのほうに走りよる。
「そこにいろ」
そう言ってメロは銃を持ってドアの前まで言った。
「シドー」
銃で扉をたたいたあと、何かを言った。暗号だろうか。
「死神はチョコレートが好き」
メロの暗号に、外にいる男が応えた。
その答えを聞き、メロは扉を開けた。
そこに立っていたのは、メロと同じくらいの年齢の男性だった。派手なシマシマのシャツを着て、色つきのゴーグルをかけた目立ちそうな格好をしていて、たくさんのチョコレートの入った紙袋を持っている。言わずもがなメロの物だろう。
「メロ、お前…昔から思ってたんだけど、いい女と縁があるよなぁ」
私を見たゴーグルの男性はそう言って、「マットです」と自己紹介してきた。