Sweet Life 〜僕らの甘い時間〜【気象系BL】
第17章 恋のまじないABC♡
「一緒に帰らない?」
会議が終わり、帰り支度を始めた僕に、櫻井君が声をかけてきた。
まさか櫻井君の方からそう言って貰えるなんて、考えたことも無かったから、僕の心臓はぶっ壊れるんじゃないか、ってぐらいにバクバクと打ち付けてて…
「…いいよ」
たった一言を絞り出すまでに、相当な時間を費やしてしまった。
「僕、こっちだから」
「そっか、俺、こっちだから」
大して会話もないまま、僕達は別れの道に差し掛かった。
「じゃ、また…」
顔を見ると寂しくなりそうだから、俯いたまま、右手だけをスッと上げた。
「うん、じゃあまた」
地面に映った櫻井君の影が、少しずつ遠ざかって行くのを見て、僕も漸く一歩を踏み出した。
でも、
「ちょっと待って?」
僕を呼び止める声に、僕の足は急停止する。
「これ、君んだよね?」
ゆっくり振り向いた先に見えたのは、僕と櫻井君の名前が書かれて相合傘で…
「えっ、何で? ちょっ、どうして?」
僕は櫻井君の手からその紙を引き取ると、クシャッと丸めて制服のポケットに捻じ込んだ。
見られてしまった。
僕の恥ずかしい秘密を、櫻井君に知られてしまった。
僕は、まるで火が付いたように顔が熱くなるのを感じていた。