Sweet Life 〜僕らの甘い時間〜【気象系BL】
第82章 さま♡らぶ
バイト最終日ってこともあって、店長さんやら他のバイトの人やらと挨拶を交わしていたら、櫻井さんとの約束の時間をすっかり過ぎていて…
僕はかつてないくらいの速さで、ビーチへと走った。
でも、約束した筈の場所に櫻井さんの姿はなくて…
「マジか…」
僕は砂の上にペタンと尻もちを着くと、ガックリと肩を落とした。
櫻井さんが時間に正確な人だってことは、薄々気付いてた。
だから約束の時間を30分も過ぎてしまったら、もう待ってはいないだろうって…
終わったんだ、って…
もう終わりにしよう、って…
引いては寄せる波を見ながら、僕は自分自身に言い聞かせた。
それでもやっぱり悔しくて…
僕の手は自然と砂を握り締めていた。
「馬鹿…。30分くらい待っててくれたって良いじゃん…」
これでも頑張って急いで来たのに…
「櫻井さんの馬鹿…。だいたいさ、僕より色黒とかさ、ありえないし…。それに、ずっと言わなかったけどさ、サーフィン下手っぴだし、全然かっこ良くないんだよ…」
なのにさ、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう…
「櫻井さんの馬鹿…。大っ嫌い…」
でもそんな櫻井さんのことが、僕は…
「こんなに好きなのに…、櫻井さんの馬鹿…」
思いがけず涙が零れたその時だった。
僕の頬に、冷たい何かがピタッと当てられた。