Sweet Life 〜僕らの甘い時間〜【気象系BL】
第25章 僕らの一等賞
そしていよいよ和の名前が呼ばれた。
どうやらサトくんも一緒に走るらしい。
ビデオの録画ボタンをもう一度確認して、俺は視線を横一列に並んだ和達に向けた。
和の奴、飄々とした顔してるけど、あれで案外緊張してたりすんだよな…(笑)
ん?
ふと和の隣のサトくんに目を向けると、サトくんは両耳を手で塞いでいて…
「もしかしてサトくん、ピストルの音が…?」
丁度隣に立ってカメラを構えていたサトくんママを見上げた。
すると、サトくんママは目尻を下げて、フニャンと笑った。
少し頼りない笑顔が、サトくんと良く似ている…って、それは置いといて…
「そうなのよ、あの子風船が割れる音も駄目で…、大丈夫かしら…」
確かにね…
あの“パーン”って音は、大人でもビックリするからね…(;^_^A
サトくん…、ちゃんと走れるんだろうか…
『よ〜い…!』
先生の号令で、両手で耳を塞いだままのサトくんを除く三人が構える。
パ~ンッ‼
一斉に子供達がゴールテープに向かって走り出す。
あんなにやる気なさそうだった和も、真剣な顔で走っている。
「和、頑張れー!」
俺は和に向かって叫んだ。
でも…
「おい、アイツどうしたんだ?」
和はゴールまであと数メートルの所で足をピタリと止めた。
そしてクルッとUターンをすると、スタートラインへと戻って行った。
「あ、もしかして…」
スタートラインにはサトくんが両耳を塞いだまま蹲っていて…
先生が声をかけるけど首を横に振るばかりで…
和はサトくんの前に立つと、サトくんに向かって右手を差し出した。
和の奴…
サトくんは顔を上げると、和の手を取って、漸く重い腰を上げた。
「松岡さん、写真写真!」
「お、おう!」
和とサトくんは、先にゴールを決めた二人から遅れること数分…
手をしっかり繋いでゴールを決めた。
瞬間、運動場は盛大な拍手で包まれた。