第2章 姫になりまして。
「てっ、手取り足取りっ!?あいつっ……!」
エドウィンは意外と表情豊かな人らしい。さっきから、怒ったり、笑ったり、驚いたり、戸惑ったり、色々な顔を見せてくれる。
「そうみたいね。それじゃあ、お願いしようかな」
私の言葉にエドウィンが過剰な程に反応する。
「だめです!姫様にもいつか経験する時が来るでしょうから、その時にぜひ知ってください!そのうち婚約者も決まるでしょうし!」
「婚約者?」
まじわるの意味を教えてもらうことよりも、更にエドウィンをいじることよりも、その言葉に全て気を取られてしまった。
「私にも婚約者ができるの?」
嫌だ、そんなの。恋だって何か分からない。そんな私が好きでもない人と婚約だなんて。
でも、文句は言えない立場だ。
だって私は、下町育ちの薄汚い小娘だから。国王の落胤とはいえ、皇族家の人々からすれば、ただの汚い人間。
「……そう、ですね。十日程すれば舞踏会があります。舞踏会とは言いましても、国民が想像しているようなものではありません。様々なご令嬢方が皇子に熱烈なアピールをすることでしょう。次期王妃となるために。おそらく、姫様にも貴族のお子息方が寄ってこられるかと。その舞踏会こそが、国王の後取り争いの始まりと言っても過言ではありません」
つまり、私はそれに巻き込まれると。
「ふーん……」
正直、乗り気はしないのだけれど、父さんと暮らすために私が決めたことだ。最後まで、役は貫き通す。