第2章 姫になりまして。
「……分かったわ。それまでに、作法とか行儀とか覚えないと」
え?と、エドウィンがどこか拍子抜けな顔をする。
「抵抗なさらないのですか?見ず知らずの男と婚約しなければならないというのに」
彼は私に何と答えて欲しいのだろう。
抵抗しろと?それを望んでいるのというのか。
そんな訳ない。
したくても出来ないことを知っていて聞いているのだ。私という存在が、どれだけ無力なものなのか知っておきながらも、彼は抗えと?冗談じゃない。
「私がそんなにわがまま娘に見える?身の程くらいわきまえているわ」
少し冗談めかして言ってみる。
でも、彼は愛想笑いの一つもしてくれなかった。
「姫様……辛いでしょう?こんなこと、姫様は望んでいないはず」
驚いた。
彼に私の何が分かるというのだろう。
どうして、そんな顔をするのだろうか。
泣きそうで怒っているような、何とも言えない顔。
「意外と望んでいるかもしれないわよ?あんたには分からないわ」
不本意なことだって、不条理なことだって、絶対に答えはyesだ。彼には分からない。
分かるはずがない。
手が届く距離にやっと見つけた幸せに対する執念など。