第2章 姫になりまして。
「姫様に向かってなんて口の聞き方を……!不敬罪だぞ!」
すぐにでも怒りが爆発してしまいそうになっているエドウィンを目で制止して、デュークに笑顔を向ける。
「私はミレディ・アルクインよ。よろしく」
片手を差し出すも、デュークは握手せずに私の掌に自分の掌を叩きつけた。
「悪いが、俺はお前みたいなチビガキの相手をするほど暇じゃねーんだ。よろしくしたかねーよ」
「そう。私からしたら、そんなチビガキにいちいち牙を向けるあなたも充分ガキだわ。そちらにその気がないのなら、私だってよろしくしたくはない。わざわざそんなことを言うために部屋に来てくれてありがとう」
つい嫌味で言い返してしまった。
だが、仕方が無い。
あちらが先に喧嘩腰できたのだから。
「嫌味なガキだな。さすが下町育ちは他の皇族家とは違ぇ。俺はこの護身用の短剣を渡しに来ただけだ。そこの平和ボケ野郎と仲良くよろしくしてろ」
ぽんっと鞘付きの短剣を投げられる。
ナイフ以外の刃物なんて初めて持った。これが剣……。短剣だからそんなに重くないし、扱いやすそうだ。
「交わるって意味もそこの平和ボケに教えてもらえ。手取り足取り、な」
それだけ言い残して、笑い声をあげながら部屋を出て行く。まったく、腹の立つ。でも、裏表のない人はそんなに嫌いではない。裏のある人よりも、ああやって本心をぶつけてくれる方がいい。