第2章 姫になりまして。
ベランダにいるせいか、いつの間にやら部屋に入ってきていた人に全く気づかなかった。入ってきた彼は、とても身長が高くて、エドウィンとは対照的にとても筋肉質な体だ。細身なエドウィンと並んだからか、更に鍛え上げられた体が際立つ。茶髪の髪にオレンジの瞳。城の者とは到底思えないようなラフな格好。上半身は特にそうで、シャツを羽織っただけで素肌は丸見え。下町の人間とあまり変わらない格好だ。
「よぉ、エドウィン」
「よぉ、じゃねーよ!てめぇ、ノックくらいしろ!姫様の部屋だぞ!」
あれ?エドウィン?
エドウィンってこんな人だっけ?
まだ出会って少ししか経っていないけど、エドウィンはもっと穏やかな印象だ。それが今、全て覆された。
「おおっと、エドウィンさんよ。いいのか?そこのチビ、びっくりしてんぜ」
「チビ言うな!姫様は少し身長が低いだけでチビではない!……っ!」
エドウィンが、しまった、というように停止する。
「ひ、姫様っ!申し訳ありません!私としたことが、取り乱してしまいっ……!」
本当に悪いと思ったのだろう。
頭を勢いよく下げる。
怒ったりとかはしていないけど……、どちかと言うと謝る所はそこじゃない気がする。例えば、チビって言われたことに対して反論してくれたはいいけど、なんのフォローにもなってない、むしろ傷が更に抉られたこととか。
「ぶはっ!エドウィンがワタクシだってよ!ははははっ!ひぃーっ、気色悪ぃ!くくくくくっ」
え、エドウィンが私って呼ぶと、変なの?
どこも違和感なんてないし、馴染んでるけど……。
「エドウィン、頭を上げて?私は別に怒ったりしてないわ。それに、私に対してこんなにかしこまるのだって、仕事だもの。しょうがないわ。むしろ、さっきみたいに接してくれてもいいのだけれど」
「そ、そんなこと出来ません!あの者の言うことは信じないで下さい!……申し訳ありませんが、少しあの者を黙らせてきてもよろしいですか?」
まだ笑いが収まらないらしく、ひーひー言っている大柄な彼のことを指さす。エドウィンは相変わらず笑みを浮かべていたが、かなり凶悪な笑みだった。
「するなら後ででもいい?それよりも、彼が誰なのか気になるわ」
やっと笑いが収まったのか、大柄な彼が私へと歩み寄る。
「俺はデューク。エドウィンと同じく、お前の子守役だ」
