第1章 紅き姫の誕生
「いけないことだと思うほど、私たちの愛は抑えられなくなってしまった。そして……交わってしまった。禁忌だと分かっていながら、それを犯し続けた。何度も何度も……」
まじわる……?
それはいけないことなのだろうか。
「そうして、禁忌を犯し続けた果てが……お前だ。思えば、あの頃……エレインが城から忽然と姿を消した十七年前……いや、もう少し前か。様子がおかしかったんだ。体調を崩しやすくなり、よく倒れるようになった。医者に診てもらうことを勧めたが、彼女は頑なに拒み続けた。その時に気づけば良かった。子を授かっているのだ、と。だが、その頃、私の妻も腹に子を宿していた。そして私は、あまりエレインのことを気にかけてやれなくなってしまった。そんな時だった。エレインが城から消えてしまったのは」
まじわることは禁忌。
しかも、まじわると子供ができる。
よく分からない。
あとで酒場の酔っ払いに聞いてみようか。
いや、そんなことよりも。
私は……
「……禁忌の子」
口にしてみると、頭を鈍器で殴られたような衝撃があった。私の存在自体を否定されているようで、恐ろしく感じる。
「お前のことをそういう輩もいるだろう。だが、少なくとも私とエレインにとっては、二人が愛し合った唯一の証であり、たった一人の愛しい娘だ」
彼が……父さんが立ち上がり、私を優しく、それでいて強く抱き締めた。
「やっとだ。やっと見つけた……。十七年間、探し続けてやっと……。名前を聞かせてはくれないか。私とエレインの愛しい子よ」
初めて、自分の名を誇らしく思えた。
「ミレディ……ミレディ・アルクインよ」
「ミレディ……私とエレインの娘に相応しい、とても良き名だ。よくここまで美しく強く育ってきてくれた」
私も応えるようにして、おそるおそる背中に腕を回す。
「とう、さん……父さんっ……」
一度でいいから会いたかった。
父さん、と呼んでみたかった。
例え、父さんが国王で、私の母とは結ばれてはいけなかった関係だったとしても、私は私という存在が誇らしい。誰にも否定なんてされようものか。
母さん……。
やっと、家族が揃ったね。