第1章 紅き姫の誕生
「ミレディ、私と城で暮らさないか」
父さんの言葉は、あまりに唐突で驚く言葉だった。
「ええっ!?で、でも私……作法とか分からないし、言葉だって上品な言葉なんて話せないわ。それに、学なんてない。辛うじて、読み書き出来る程度よ」
下町育ちで、読み書きができるのはかなり優秀な方だ。まあ、城へ行けば、それが当たり前になるだろうし、私は落ちぶれ決定だ。
「いいや、ぜひ来てくれ。お前を一人で住まわすのは心配だ。それに、今度こそ守ってみせよう。絶対に、守ってみせる」
「父さん……」
一人で暮らすことには慣れた。
だがどうも、一人の寂しさには慣れない。
だから、とても惹かれる言葉だ。
でも、私は父さんにとって……国王にとって、あまりいい存在ではない。
「頼む。もう、愛しい者を失いたくはないんだ……」
私はどうやら父に甘いらしい。
「……うん、分かった。私も、もう一人は嫌だもの」
こんな簡単に決めてしまってもいいものなのだろうか。答えは分かりきっているけど。
こんなの、だめに決まってる。
でも、それでも家族だから。
やっと、一人分の幸せを……普通の幸せを手に入れられる。
そう思っていた。