第11章 実態
それからの日々はあっという間。
翌日には固定砲整備の為、初めて壁の上に登った。
ここまで高い場所に立つのは初めてで。吹きすさむ風の強さに、少し驚いた。
壁の外側を見下ろせば、間抜けな顔した巨人がこちらを見上げていて。それから目を背けるように視線を上げれば、どこまでも高く青い空。そして果てまで続く地表に、緑が広がっていた。
『ついでだから』とエマが親しい駐屯兵に頼み、門を巻き上げる機械を見せてくれた。
「私達が壁外へ行く時、駐屯兵団が門を上げてくれるんだよ」
そう言ってハンネスという男を紹介してくれた。
ここで知ったのはエマはここ、シガンシナ区出身。という事だ。彼とは小さい頃からの知り合いらしい。
生活を共にする内、班員とも親しくなった。彼らは色々な話をしてくれる。
「俺はエルヴィン分隊長も、エマさんの事も尊敬してるんだ」
以前くだらない話を耳にした時は少しばかり気にもしたが、この2人を好意的に思っている兵士は多いようだ。
エマに批判的なのは、彼女と同年代の男性兵士が主だという。その理由は……まぁ何となく分かる。
そして……
「俺はやっぱり、団長に憧れるな!」
この声は想像以上に多かった。正直、エルヴィンの方が頭が切れるのではないか?と疑問だったが……
「あの人は、もう10年団長を務めてるんだ。本当に凄い人だよ」
この言葉には、説得力があった。
命があっけなく失われていく、そして世間からの批判も多い中。10年という長い年月トップに立ち続けた実績と経験は、確かに尊敬に値するだろう。
少しづつ、少しづつ。
調査兵団の実態が見えてきた。