第56章 作戦会議
「……なんや……。」
善司は胸を押さえた。
いつまでたっても痛みはこない。
手を見ても血はついていない。
「……安心しろ、空砲だ。」
再びクスリと笑うと、白川は拳銃をしまった。
「でも、もし今のが敵だったら…お前死んでたぞ。」
鋭い威圧的な目付きで白川が善司を見ている。
善司の額からタラリと汗が流れた。
「お前を殺す事など造作もないことだ。藤堂のこともそうだが、これからは見た目だけで力を推し測るな。考えて行動しろ。わかったか?」
切迫した空気が部屋に流れる。
「……はい。」
善司が小さく答えた。
これが組長と言うものだろうか。
白川和真という男なのだろうか。
ジッと誠也は白川を見ていた。
「それにしても何故暴走族がいる。」
白川の目が誠也に向いた。
「俺が連れて来ました、堀田辰輝の件があるので。」
宗次郎が言った。
「堀田辰輝?…あぁ、銀楼会の会長の倅(せがれ)か。そいつもこっちに来ているんだろ?」
「はい……なぜそれを?」
「まぁ…色々と耳に入ることが多くてな。」
そう言うと、白川は懐から煙草を取り出しくわえた。
カチン―――
「さしずめ、江田の倅と裏切り者の差し金だろう。」
ボッ―――
ジッポーのネジを回し炎を作り煙草の先を当てた。
ジワジワと火が煙草を侵食している。
「どうしてそこまで?」
それを見ながら、宗次郎が尋ねる。
「この前、豪龍会の会長の所に行った。」
「え……?」
宗次郎が驚いている。
「話をしたんだ、短時間だがな。」
「それで…。」
「まぁ、焦るな。会長は"バカ息子を止めてくれ"と言っていた。全ては江田の倅……隆盛の所存だ。今、豪龍会の中で派閥が出来ているらしい。それも隆盛が仕切っているらしい。"殺虎"という組織を作ってな。もう豪龍会は若い者に飲み込まれつつある。」
そこまで言うと白川は煙草の煙を吸い込んだ。