第56章 作戦会議
「ん……。」
雨が止んだ頃。
ゲームセンターの入口で横たわっていた先輩がゆっくりと目を覚ました。
「大丈夫ですか?」
上から先輩の顔を除き込む。
「あ……うん、というかごめんっ。」
先輩が慌てて顔を上げた。
それもその筈。
先輩はあたしの膝の上に頭を置いていたのだ。
でも、それはあたしが自らしたこと。
傷付いた先輩の頭を固い地面の上に置くのは心劣りないからだ。
「いえ、大丈夫ですよ。」
あたしは笑いながら言った。
「こんなん、誠也が見たらどやされるだろうな。」
ガシガシと生乾きの髪を先輩が掻いた。
いつも見たいにオールバックでは無いからだろうか、なんだか先輩が幼く見える。
「あのさ……髪結ぶゴム持ってない?」
「あぁ、ありますよ。」
ポケットから黒のヘアゴムを出すと、先輩に渡した。
「ありがとう。」
先輩はそう言うと、前髪を後ろへ流し、襟足を残して後ろの髪とまとめて結んだ。
お笑い芸人の北○のア○ちゃんがよくしている髪型だ。
先輩、男だけどなんだか似合う。
思わず見とれてしまった。
「何?」
それに気づいた先輩がこちらを向いた。
怪我をしている顔が、優しく微笑んでいる。
ドキ―――
あたしの胸が高鳴った。
いかーん!!
こんなことが誠也君にばれた時には、それはもう恐ろしい事が起きるに違いない。
あたしは、邪念を掻き消すようにブンブンと顔をふった。