第54章 団結と侵略
「今、嶋中から電話があった。岩中の家の近くで髭の男を見たらしい。」
携帯をしまった藤崎先輩が誠也君に言った。
「堀田か?」
「いや、わかんねぇ。」
誠也君の問いに藤崎先輩が首を横に降る。
「ちょっと行ってくる。……拓。」
バイクにまたがった彼が藤崎先輩を見た。
「桜を頼む。」
キュルルルル―――
ヴォンッヴォンッヴォンッ―――
そう言うと彼はエンジンをかけた。
「わかった。」
先輩が力強く頷く。
やだ。
行かないで。
心の奥底の黒ろい何かがそう叫んでいる。
「…誠也君。」
ジッと彼を見つめた。
「大丈夫だ、ちゃんと帰ってくっから。」
また、彼の手があたしの頭を包み込む。
「うんッ。」
あたしは笑顔で頷いた。
―――あたしも、彼を信じて待とう。
改めてそう思った。