第53章 闇からの使者
「…いいねぇ、なんかクソ熱くなってくるわ。あー、レゲエ聞きてぇ。」
そう言うと、男はポケットからイヤホンを取りだし耳につけた。
男の耳にほどよいリズムの音楽が入っていく。
ユラユラと身体を揺らしていた。
「ナメてんのか?」
先輩が男を睨み付ける。
「いんや、これが俺の喧嘩スタイル。いつでも来いよ。」
「うるっせぇなぁッ!!」
シュッ――――
先輩が殴りかかる。
「HEY。」
踊るように男が避ける。
「クソおせーぞ?そんなんじゃリズムの波に乗り遅れるッ。」
シュッ――
バコンッ―――
「ぐふッ―――」
男の拳が先輩の腹にめり込んだ。
バコッ――
ゴガッ――
先輩が避ける間もなく顔やお腹に拳が入っていく。
―――ヤベェ……相手のリズムに惑わされてる。
先輩は口から出る血を拭った。
―――思い出せ俺、バイクのコールのリズムを。いつもやってんだろ。
スーと自分を落ち着かせるように息を吸った。
その間も男が左右にユラユラと揺れている。
―――来るッ、左ッ!!
シュッ―――
左から拳が飛んできた。