第45章 忍び寄る魔の手
「んー…ヤだ。」
「え。」
「ちょっと、ゲームする。おい、ガキ。桜返して欲しい?」
辰川は屈んで勇人君を見た。
「当たり前だろッ!!」
「ならさぁ……俺に一発でも拳当ててみろ。なら、返してやってもいいけど。」
ヘラヘラと笑っている。
「んなの、無理に決まってんだろ。さっさと行こう。」
「テメェは黙れ。…殺されたいの?」
辰川が振り返った。
鋭い目付きで彼を見ている。
「……ごめん。」
男が頭を掻いた。
「どうする?」
再び、勇人君を見た。
やめて。
逃げて。
あたしは勇人君を見ながら首を横に振った。
「……するに決まってんだろ。」
一瞬あたしを見ると、勇人君は黒のジャージの袖を捲った。
「そっか。なら、相手してやる。」
そう言って、辰川が立ち上がった。
バサッと特攻服が音を立てる。
「まぁ、でもここじゃ狭いし。表出ろ、ガキ。」
「上等。」
勇人君が中指を立てた。