第5章 出逢い
「…たく、死にてぇのかよ?」
後ろから声がした。
そういえば誰かが腕を掴んでいる。
あたしは後ろを向いた。
「……あっ……。」
そこには、不機嫌そうな男の人がいた。
あ…
この人知ってる。
3年の秋本 誠也だ。
あたしはそう思いながら彼を見た。
彼は学校…嫌、県内で結構有名な人だった。
悪い意味で。
だからあまり関わりたくなかった。
「秋本先輩、ありがとうございました。」
でも助けてもらって礼を言わないわけにはいかない。
あたしは頭を下げた。
「…別に。」
けれど彼は私を見ずに屋上の縁に座って煙草を吸い始めた。
ゆらゆらと煙草の煙が漂ってくる。
「………。」
居づらい………
そう思ったが今さら教室に戻る訳にもいかず、あたしも屋上の縁に座った。
「朝日、…お前いつもここに来てんな。」
煙を吐きながら彼が言った。
「…え?なんであたしの名前……。」
「お前結構有名だから。」
そう言って彼は煙草をもみ消した。
「……はぁ…。」
有名ってあたしなんかしたっけ?
「……それに……。」
彼はあたしをみた。
彼の瞳に吸い込まれそうになる。
あわてて目をそらした。
それにしても真っ赤な髪。
あたしはワックスで整えてある彼の髪をみた。
「……なんだよ?」
彼は不機嫌そうに言った。
「いえ……なにも…。」
あたしこの人苦手だ……
授業の終わりのチャイムが鳴った。