第5章 出逢い
中学2年の5月。
授業をサボり気味だったあたしはいつも屋上にいた。
特に何をするわけでもなくグランドで体育をする生徒を見ていた。
「…。」
その頃あたしには憧れの人がいた。
1歳上の先輩で、綺麗な黒髪と笑顔が素敵な人だった。
名前は知らなかった。
ただサッカー部ということは知っていた。
「……あっ。」
誰がシュートを決めた。
あの人だ。
そう思うと胸が高鳴った。
興奮気味に前へ身を乗り出した。
この時あたしは先輩に夢中で前を見ていなかった。
「……きゃっ!!」
体が前へゆっくり落ちていく。
あたし終わった。
そう思って目を閉じた。
「あれ?」
けれどいつまでも地面に到達しない。
あたしは不思議に思い目を開けた。