第33章 恐怖再来
「ハァハァハァ―――。」
今、あたし達は逃げている。
緑の瞳の彼から。
フラフラの誠也君が必死にあたしの手を引いている。
山吹色の髪をした男よりも遥かに強い相手。
強い筈の彼が、初めて"逃げ"を選んだ。
あきらかに違い過ぎる筋肉の質。
同じパンチでも威力が異なる
今まで感じた事のない恐怖を彼は初めて感じていた。
今のままじゃ確実に殺される。
バレないように逃げるしかない。
「Come out.(出てこい)」
遠くでジョンの声が聞こえる。
「こっちだ!!」
細い建物と建物の間の通路に入った。
飲食店の業務用の大きなゴミ箱の横に身を潜める。
彼が倒れるように座り込んだ。
「ハァハァハァ…。」
彼の息が荒い。
乱れた髪が顔にかかり顔の所々が腫れて血が出ている。
「誠也君大丈夫!?」
声を潜めて彼の血を鞄に入っていたハンカチで拭う。
「……わりぃ…守れるかわかんねぇ――。」
プライドの高い彼が弱音を吐いた。
それがどれだけ彼にとって辛い事なのかあたしには分からない。
「Come out.」
ジョンの声が近くまで来た。
足音も。
そして、止まった。
バレたか?
息を切らした彼が様子を伺っている。
「――――」
声はよく聞こえなかたが、何かを言うと足音は遠退いていった。
ドクドクドク――
心臓が暴れている。
助かったと。
「恐い…思い…させて…ごめんな…守れなくて…ごめんな――」
あの強い彼が悔し涙を流した。