第31章 孤独
「ハァハァハァ……。」
走って走って走り続けて、誰もいない建物の間に逃げ込んだ。
冷たい壁に背中を預けると、ポケットから白い粉の入った透明の小袋を取り出した。
袋を開けて粉を指につけると、切れた口の傷口に塗り込んだ。
何度も。
「ハァハァ……ハァ…。」
しだいにスーと気持ちが落ち着いてくる。
というより、ハイな気分になる。
「……クソがっ…。」
亜久里はそう呟くと口から垂れる血を拭った。
彼は赤い髪の男が忘れられなかった。
それと、自分の前に立ちはだかった茶色い髪の女。
考えるだけで頭がクラクラした。