第29章 紫の特攻服
次の日。
「………。」
あたしは、部屋に飾られてある大中小の紫の特攻服を睨んでいた。
"朝日 桜"
そう書かれてある真ん中にある特攻服。
これは素直に喜ぶべきなのだろうか。
喧嘩もバイクもド素人のあたしが、はたして族の看板であるこの特攻服を羽織ってもよいものか。
ずっと考えていた。
「なかなかいいできだろ?龍にしようか迷ったけど椿の刺繍にしてもらったんだ。」
あたしの名前の下にある大きな花の刺繍を触りながら彼が言った。
そういえば、あったな。
彼の特攻服の背中には龍がある。
勇人君にも。
「お前には花が似合うと思ったんだ。」
彼が無邪気に笑った。
「そっか。」
あたしも思わず笑ってしまう。
始めは嫌だったけど、彼が喜んでいるのだからあたしも素直に喜ぶことにしよう。
あたしは、壁にかかった特攻服を見つめた。