第28章 下と上
同時刻。
今は、数学の時間だ。
ご飯の後だけあってか、睡魔が襲う。
先生の声でさえ子守唄に聞こえてくる。
「……ふぁ…――。」
あたしは大きく欠伸をすると、俯せになった。
モフ――
その時、お団子にしたあたしの髪に何かが触れた。
あたしは、顔を上げる。
「お前の髪、なんかおもしれぇ。」
目の前で松崎君がシャーペンを使ってあたしの髪を触っていた。
「やめてよ、松崎。」
眠たい眼を擦りながら彼を見る。
「やだ。」
意地悪な彼が笑っている。
「………。」
あたしは無言で彼の頬をつねった。
両手で。
「お前…。」
彼もあたしの頬をつねった。
「いひゃいよ。」
「おめぇがするからだろ。」
あたしは彼から手を離す。
「…はなひぃて。」
「やだ。」
「にゃんで?」
「おもしろいから。」
彼が無邪気に笑った。