第19章 初会
誘拐から数日前。
PM8:48
会席料理屋、"琴"にて。
「わかがし、わざわざこのような場所に足をお運びいただきましてありがとうございます。」
一室の襖で隔てられた部屋に松下と若頭の岩中 宗次郎が向かい合うようにテーブルについていた。
畳の部屋で。
目の前には豪勢な料理が。
松下はその前で深々と頭を下げている。
「松下、用件はなんだ。手短に言え、俺には時間がない。」
松下よりも短めの黒髪をオールバックにした宗次郎が低い声で言った。
「はい、実はこの写真を見てください。」
「くだらないものだったら怒るぞ。」
「大丈夫です、きっと気に入るはずですから。」
松下は顔に笑顔を張り付けた。
そして、テーブルに伏せて渡す。
「………これは――。」
宗次郎は目を見開いた。