第1章 彼氏
「誠也君?」
教室を出ると目立つ彼。
私よりもはるかに高い背。
彼の派手な赤い髪の毛もそうだが、人混みから顔が飛び出して見える。
威圧的な目。
それが何よりも人を遠ざけていた。
無意識に。
それがなんだかおかしくて、笑えた。
「桜?」
あたしの声に気づいたのか彼がこちらを向いた。
「遅くなってごめんなさい。」
「いや…ん。」
無言で彼が手を差し出す。
それは決まって何時もの事。
私は自分の鞄を差し出した。
「………。」
そして、彼は無言で歩きだした。
私も慌てて隣につく。
これも何時ものこと。
決して意地悪をしているわけではない。
要するに彼は不器用なのだ。
と、あたしは思っている。