第15章 恋敵
あたしにとってもうすぐ嫌なイベントがある。
「あー、運動会マジだる。」
麻央が髪を触りながら言った。
最近、彼女は髪を切ってボブヘアーになっている。
「いいじゃん、山中とペアなんだし。」
美奈子が体操服に着替えながらニヤニヤと麻央を見ている。
「それが、嫌なの!!」
麻央は叫びながら体操服を手に取った。
「ほんとー?つか、さくちんはペア誰?」
「え?吉田君だよ。」
あたしは長い髪をひとつにまとめながら応えた。
「吉田かぁ。あたしなんか松崎だよ。」
着替え終わった千加が応えた。
「松崎、絶対さくちんとなりたかっただろうね。」
「また吉田イジメ激しくなるよー。」
「え…。」
笑いながら早苗が言った。
あたしは、笑えなかった。
どうして彼らは吉田君をいじめるのだろう。
優しいのに。