第12章 手
次の日。
「なん、もうお前退院するん!?」
三善先輩は驚きながら言った。
「ったりめぇだ、たいした事ねぇよこんな傷。」
「ハハ、お前らしいよ。」
誠也君を見て藤崎先輩は笑った。
あれから、先輩はふつうに接している。
彼にもあたしにも。
だから、あの日の事は幻に見えた。
「つか、俺のバイクは?」
「家においてる。」
「そっか、わりぃな拓。」
「気にすんな、俺こそごめん。」
「………あ。」
先輩は一瞬こっちを見た。
「なにが?」
不思議そうに誠也君は藤崎先輩を見た。
「別に。」
先輩は無邪気に笑った。