第12章 手
「桜。」
「…んぅ…。」
誰かに揺さぶられて目が覚めた。
いつの間にか寝ていたらしい。
辺りはもう明るい。
「お前、一人でずっとおってくれたん?」
「え…。」
一人?
あたしは辺りを見渡した。
しかし、先輩の姿はもうない。
先輩帰っちゃったのか。
「桜。」
誠也君があたしを抱き締めた。
「すげぇうれしい、会いたかった。」
彼の腕に力がこもる。
「あたしも。」
あたしも彼を抱き締める。
温かい。
でも…――
あたしは昨日の事を思い出していた。
先輩のあの顔が忘れられない。
あたしは目を閉じた。