第1章 彼氏
"誠也君"
ディスプレイに表示される彼の名前。
何度通話ボタンを押そうと思っても押せない。
このままじゃダメだ。
そう思って勇気を出して押そうとしたら電話がかかってきた。
彼だ。
急いでボタンを押す。
「……もしもし。」
消え入りそうな声で言った。
なんだか緊張する。
『…桜?…俺…だけど…。』
「うん…」
『あのさ…今日…』
「うん…」
『なんつーか…………悪かった。』
小さくて聞こえにくかったけど彼は確かに言った
"悪かった"と。
「え?」
『俺…お前にああいう格好してほしくねぇんだ。』
「うん…」
『他の奴に…お前が見られてるかと思うと……すっげーイライラして……どうしようもねぇんだ。』
「それって…」
ヤキモチ?
誠也君がヤキモチ妬いてくれてたってこと?
『だから…もう……――』
「あたし…いつも誠也君があたしの方を向いてくれないから…嫌われたと思って…それで…それで友達にしてもらったの…。」
『嫌い?…俺が?』
「うん…。」
『俺は…お前が好きだ。ずっと…でも、俺…色んな奴殴ってきたしこの汚ねぇ手でお前に触れたくねぇんだ。』
「え…」
『お前を汚したくねぇ…
大事だから…。』
その一言ではち切れたように涙が溢れ出てきた。
何てあたしは自分勝手だったんだろう。
彼の気持ちに気づけないないなんて彼女失格だ。
「……っ……」
『どうした?……ないてんのか?何かわりぃこと……』
「うぅん、嬉しくて。あたしも誠也君が好き。愛してる。」
『お…おぅ。』
誠也君は照れたように言った。
『じゃあまたメールする。』
「うん、バイバイ。」
そこで通話は切れた。
あたしは嬉しくてベットに飛び込んだ
"お前が好きだ。"
その言葉が頭に何度もこだまする。
なんて幸せなんだろう。
この幸せが続けばいいのに。
本当に