第7章 きょうだい 其の參
「それじゃあ俺っちもちょっと席を外すぜ。
乱、大将のことは任せた」
「さっさと行ってきなよ」
「まっ、待ってっ」
「大人しく待っててな、たいしょ」
不穏な気配を察知ですよ?
わたし生きていられるのでしょうか(わたしの為にお薬を取りにいってくれているわけですがね)?
「あるじさん、もしかして苦い薬とかだめなの?」
「苦いのはちょっと…錠剤だったら平気ですけど」
「残念だけど粉薬だよ」
死亡フラグ…です…。
「でも、飲めたら、明日…」
「だーめ。明日は家でゆっくりお休みするの。
無理させたくないからね」
「えっでも乱、出かけたいって…」
「そんなのどうだっていいでしょ?
ボクはあるじさんが大事なの」
我慢しようにも勝手に表情がしゅんとしてしまいます。
乱はくすっと笑ってわたしの髪を撫でました。
「早くよくなってね」
「…はい」
スパァン!と突然襖が壊れるんじゃという勢いで開けられてわたし達は部屋の入り口を見ました。
お昼ご飯?をお盆に乗せて持った清光と、タオルとお湯の入った洗面器を持った今剣が立っていました。
「主大丈夫!?やっぱり体調よくなかった?
何か無理しちゃったの?もっと俺が気を付けてればよかったのに…ごめんね?」
食らいつくような勢いで枕元に近づいてきた二人。
それぞれ持っていたものを床に置いて、食いぎみに話しかけてきます。
「あるじさま!やっぱりぼくのわがままのせいで…ほんとうにごめんなさい!
しんどかったんですよね?だいじょうぶですか?」
心配させてしまいましたよね。
帰ってきたら踞ってたなんて…。
「もう大丈夫ですよ。
心配してくれてありがとうございます!
薬もいらないくらいですよ、元気一杯です!」
「だめですよ!きょうとあしたはおくすりをのんであんせいにしていないと!」
「そうそう!一度しっかり休んでくれないと!」
…手強い…。
「…薬が飲みたくないです」
「ダメだからね?飲ませるよ?」
「あるじさま、おくすりのめないんですか?」
はっ…ここで飲まなかったら、野菜を食べるのが苦手な今剣はどう思うのでしょうか。
主としての面目も…覚悟を決めなくては。
「…飲みます。例え粉の薬だったとしても、きっと飲み干してみせます…!」
今剣に『野菜食えって言うくせにお前はどうなんだ』と思われないためなら、わたしは飲んでみせましょう。