第6章 きょうだい 其の貳
「幸せって今のことですね…。
お昼寝日和ですねぇ…お布団の中みたい…」
本当にうとうとしてきました。
「あるじさまにあまりべたべたとさわらないでください…」
「それを言うならそっちの方が触ってるとは思うけどな?」
ばちばち言ってますねこのお布団達。
「もー、そんなにわたしのことが好きなんですか?
そろそろもう一人のわたしを出現させる術を覚えないとですね」
「あるじさまはひとりでいいんですよ!」
「それはそれで面白そうではあるがなぁ」
こんなに愛されているなんて、主冥利に尽きます…眠たい。
「このまま寝ちゃいましょうか…だめです、そろそろ用意しなくて大丈夫ですか?」
「あー…もうきがえないと…ずっとこうしていたかったです…」
「よっこらせ、っと」
もぞもぞと二人が起き上がります。
「わたしはもう少し、ごろごろしてから玄関に行きますねー」
「おう、じゃあ後でな」
「すぐきがえてきますからね!」
しん、と、空気が冷たくなったみたいに思います。
人口密度が全然なくなっちゃいましたし…。
「神気…ですかぁ…」
ぽつり、水滴みたく呟きます。
どう考えても原因は…。
「神隠し…」
ですよね、うんうん…。
これは考えるまでもなく黙っていないと、後の関係に多大な影響を、悪影響を及ぼします。
それにしても…今ならあの時の状況を客観的に、というか何か絵本を眺めるように他人事に見れるのですけれど、綺麗というか、綺麗過ぎてどうにかなってしまいそうでしたね…あの場所。
絶対に本来踏み込んじゃいけない域でした。
よくわたしは、ブルッちゃって動けない!みたいな事態にならなかったですね。
考えてたらなんかちょっと、頭がぐるぐるしてきました。
何でしょう、あの場所の神聖さに、わたしは負けていて未だにその影響をずるずる引きずっているのでしょうか?
わからないことだらけです…。
ここのことだけじゃなく、ここに来る前も。
考えても仕方のないことですが、気には留めておかないと…きっと、わたしはずっと、ずるずると、逃げている筈ですから。
何かから、そう、何かから。
受け入れ難い何か。
信じられない何か。
ごろりと寝返りで天井を見上げる体勢になってみて、何となく目を閉じてみます。
瞼の裏には、夢さえ映りませんが。