第1章 空気と同じ透明から
あの狐がいなくなったところでわたしはどうしたらいいんでしょうか?
「清光は、何がしたいですか?」
自分の髪の毛を触っている清光。
髪の毛がぼさぼさになったくらい気にすることじゃない気がします。
「お風呂に入りたいですか?
あ、お腹減ってるならご飯を先にします?
でもでも清光って刀…でしたけど、お腹って減るんでしょうか?」
「お腹は減ってるけど、先にお風呂がいい…かな」
悩みながら答えた清光。
そういえば、もう夕方でした。思い出したみたいにわたしもお腹減ってきましたよ。
「じゃあお風呂からですね!
ここのお風呂、とっても広いんですよ!
それにいつもあったかいお湯があって、いつでも入れるんです!早く行きましょう!
ああそう!どこか痛んだりしませんか?」
手入れは終わりましたが、清光は起きたばかりです。
もしかしたら、怪我はなくなっても痛いところがあるかもしれません。
「もう大丈夫だよ。長い時間ずっと手入れしてくれたよね。
ありがとう、主。俺すごく幸せ」
うん、元気みたいですね!
「では行きましょう!こっちですこっちです!」
清光が立ち上がったので、部屋を出て廊下を進みお風呂場まで向かいましょう!
「…でもやっぱり、わたしのせいであんな、傷だらけにしてしまって…申し訳ないです、ごめんなさい清光」
きちんと謝ります。
知らなかった、では済まない話でしょう。
「いいよ、主はそんなことで謝らなくて。
俺はあくまで、『主の刀』なんだからさ。
怪我は付き物だよ。
主が怪我して帰って来た俺を、手入れしてくれて、愛してくれたら、それだけでいいの」
頭を撫でられて、なんだか安心しました。
あっそうこうしている間に脱衣所ですよ。
「ここが脱衣所で、その奥の戸の先がお風呂です!
服着たままですが、説明のため一度入りましょう」
ペタペタとちょっと濡れてるお風呂の床を進み、シャワーの所まで移動します。
「これはシャワーというのですが、使い方わかりますか?」
清光は首を横に振ります。
「んーと、この蛇口を開けるとシャワーからお湯が出ます。
緩めたら緩めただけお湯の勢いが強くなります。
開けたのと逆にひねるとお湯を止められます。
こっちはカランからお湯が出ます。使い方は同じで…」
清光は意味がわからないという顔をしていました。
「んっと、一緒に入ります?」