第5章 きょうだい 其の壹
瞼に強い光が当たるのにはまだ慣れません。
すごく眩しくて、見ちゃいけない気さえします(というか眩しくて目がだめになりますよね)。
クリスマスプレゼントを確認するような気持ちで目を開けます。
光の中から少しずつ姿を見せるのは、短いズボンで服の全体的な雰囲気は乱のものから女の子らしさを取り払った感じの格好の男の子でした。
つやつやさらさらした黒髪で、乱より背が高いように思います。
ちょっと病的なくらい綺麗な色白の肌をしていて儚げで…見るからに聡い子という感じです。
すうっと開かれた目の色は硝子みたいな…ビー玉とかお弾きに似た透明感のある紫色。
降り立ったその口からは、外見から受ける印象よりもずっと低い声を発しました。
「よお大将。俺っち、薬研藤四郎だ」
「やっぱり薬研かぁーっ」
乱がひょこひょこと薬研に近付きます。
「乱か。それじゃあそっちの…」
「そう!ボクらのあるじさん!」
「初めまして!雪花です!」
兄弟…とは言っても、あくまでも刀だからなのか、見た目で似ているところは見当たりませんね。
「乱が先に来てるとはな。
とりあえず、兄弟共々、よろしく頼むぜ」
「はい!よろしくお願いします!」
自分より背が低いからでしょうか。
燭台切みたいに大きな人が現れるとちょっと怖かったりしますが、短刀はそこまで抵抗がありません。
「えーと、まずはお家の案内…よりも先に、着替えの方がいいですね!
あっ土足厳禁なのでここで靴は脱いでおいて玄関に持っていきましょう!」
靴を片す為玄関に寄ってから乱の部屋、というか乱の兄弟部屋へ向かいます。
「あるじさんはねーすごく優しいんだよ!
薬研と仲良くさせてる時間が勿体ないくらい!
ずっとボクとお喋りしてて欲しいくらいだよ!」
乱がわたしのことをさっきから誉めすぎて収集がつきそうにないです…。
好かれている証拠ですけどね。
「乱がうるさくてごめんな、大将」
「いえいえ!楽しいのが一番です!
ここはみんなの家なんですから、薬研も気楽にしてくださいね!」
「うるさくてってなぁにー?
あるじさんが好きなだけなんだけどっ」
やっぱり兄弟なんですね。
わたしには兄弟いなかった気がしますが、二人の会話はすごく、仲のいい兄弟感がすると思います。
兄弟…わたしにも、そんなような人が誰かいたような気は、しなくもないんですけど…。