第5章 きょうだい 其の壹
「あーるーぷーすぅーいちっまん、じゃぁーく」
ぱち、ぱち、と手のひらが合わさる音と楽しげな歌声しかしません。
…何10回とやっているのですが、飽きないんですかね…。
子供の好奇心とは底なしですね。無尽蔵です。
そこに救済なのか何なのか、弾むようなノックする音。
ちょっとどきどきしながらベッドから下りましたが、普通に歩けました。
「もう…おわりですね」
名残惜しそうに呟く今剣。
「また今度、約束です」
そう言うと花が咲くみたいに笑ってくれるので、小さな約束をするだけですごく特別なことをしているみたいです。
さてと。廊下にいたのは案の定乱でした。
今剣もわたしに続いて部屋を出ます。
「すっごく時間経っちゃってたよ~。
あるじさんっ早く行こう!」
「そんなに急かさなくても逃げませんって。
今剣、それじゃあまた後で!」
「はい!たのしかったです!」
今剣に手を振って、スキップしながら進む乱に付いていきます。
「あるじさん、何して遊んでたの?」
「アルプス一万尺ですよ」
「ある…?うーん、よくわからないかなぁ」
アルプス一万尺…知名度低いのでしょうか?
「昔はよくやったんですけど…うーん…うん?」
『昔は』?あれ、本当にやったのでしょうか?
まぁ今は関係ないですよね。
鍛刀部屋に入ると、例の小人さんがちょこんと座っていました。
その傍らには刀…短刀が。
…鍛刀と短刀、一緒に言いたくないです。
そんなことはさておき、ちゃちゃっと顕現してみましょう!
短刀を持って、次は顕現部屋へ向かいます。
「多分兄弟だなぁ、それ」
乱がちょっと、本当に来たのか~みたいな顔をしています。
「一人で大きい部屋、楽しかったんだけどなー」
「そんなこと言って。
兄弟に会えるの、楽しみなんでしょう?」
乱はまるで小学生みたいですね。
そんなことを話していたら顕現部屋に着きました!
ぱぱーっと準備を済ませて、さっと始めて、乱に会わせてあげなくては!
ぎゅうっと絡めた指に力を入れます。
乱の兄弟…一体どんな子なのでしょうか?
今までと違ったわくわくするような、どきどきするような気持ちを抑えつつ、刀剣男士を顕現させます。