第5章 きょうだい 其の壹
「そうかも、しれません…」
自分に関心がないのも、政府に何も聞かなかったのも、全部…わたしが、思い出したくない何かから、わたし自身を守るため…?
「そんな気が、すごくします」
それをすごくすごーく、ものすごく認めたくないということは、図星だから。
ではないでしょうか?
「あるじさま…?かおいろが…」
体調不良なのにお天気のいい日にマラソンをした時みたいに、視界がぐちゃぐちゃしてきました。
「ちょっと、気分が…」
貧血みたいでへなりと床に座り込みます。
吐きそうなわけじゃないですが気持ち悪くて口を押さえます。
「あるじさま!?えっと、べっど?というものにはこびましょうか!?」
頭が回らなくて心配されていることしかわかりません。
今剣との距離が近付いた気がします。
「ちょっとゆれますよ!」
何も答えられなくて、目を開けていたらどんどん気持ち悪くなって強く目を瞑りました。
目を開けると今剣の心配そうな顔がすぐ側にありました。
その背景にはわたしの部屋の天井…ここは、ベッドの上でしょうか。
「もしかして、わたし…」
「よかった!きがついたんですね!」
「むぎゅっ」
抱きつかれて変な声が。
「ぼくがちゅうとはんぱにかみかくししちゃったから、あるじさまにふたんが…」
「そうなんですか?…もう大丈夫ですよ?
心配させちゃってごめんなさい」
頭を撫でると顔を上げてくれました。
「たんとうのじかんはおわりましたが、まだてれびにむちゅうなので、せかされるまではきにしなくていいとおもいますよ」
「わかりました!それじゃあ遊びま…」
「だめです!これからけんげんもするというのに、むりをさせるわけにはいきません!
あそぶのはまたこんどでいいですから、しっかりやすんでください!」
今剣がベッドの側を離れようとします。
「えっ、ま…っ!」
「あぶない!」
ベッドを降りようとしたら、足に全く力が入らなくて倒れそうになったのを今剣が支えてくれました。
「えへへ、ありがとうございます、今剣」
「だからやすまないとだめだっていったでしょう!」
「でもわたしは、遊ぶって言いました。
せめておしゃべりとか…アルプス一万尺なら座ったままでもできます!」
「ある、ぷす…?」
何とか今剣を引き留めて、アルプス一万尺をすることになりました!