• テキストサイズ

【刀剣乱舞】天使の梯子に届かない

第5章 きょうだい 其の壹



ぐにゃりぐにゃりと景色が歪みます。
ぬいぐるみをぎゅっとするよりも優しく今剣を抱き締めます。
もしもわたしに年下の兄弟姉妹がいたり、いとことか親戚の子とかがいたら、こうしてあげたんでしょう。
気付いた時には元の廊下で、今剣も元の格好でした。

「ごめ、なさい、ごめんなさい…」

わんわん大声を上げないように泣いています。
ひっくひっくと、まさに子供みたく泣きながら言葉を聞かせてくれます。

「あんなこと、したくなかったです…!
でも、ひとりになるのが、いやでした。
あるじさんのそばにいられる、とくべつなかたがきがないぼくは、わすれられそうで…。
こわかったです…すごく、こわかったです…!」

まだ会って全然時間が経っていないわたし達です。
みんなと、ゆっくり仲良くなれたらいいと思っていたわたしですが、こんな気持ちにさせてしまうのなら、もうちょっと急いで仲良くなったっていいんじゃないでしょうか。
今剣にとって…もしかすると他のみんなにとっても、『主』という存在は、わたしが思うよりずっと重いのかもしれません。

「どこにもいかないでとは、いいません。
でも、ぼくを…おいてけぼりにしないで…。
いいこにします。おるすばんもできます。
だから…おねがい、です、…あるじさま…」

顔を汚す涙を拭っていた今剣の両手は、わたしをぎゅうっと掴みました。

「心配しなくても、今剣のことを一人だけ置いていくなんてことはしません。
怖い思いをさせて、ごめんなさい」

ぎゅっと抱きついて離れないで、顔が見えないまま、ぐす、という声だけが返ってきます。

「それに、肩書きなんて…。
気にするのは今剣くらいですよ?
だから気にしなくても…」
「きにしますよ!
みんなあるじさまがだいすきなんです。
うかうかしていたら、あるじさまとぜんぜんあそべなくなっちゃいます!」

泣いてしまったので鼻が赤くなっています。

「遊びたいなら遊ぼうって言ってくれたら、お仕事とかがあるのですぐとは言えませんが、時間を作って絶対に遊びますよ」

今剣は眉を下げて言いにくそうに答えます。

「あるじさまが、いったいなににきょうみがあるのか、ぜんぜんわかりません。
ぼくにかんしんをもっているのかも、あるじさまじしんにかんしんをもっているのかさえ、ぼくにはわからないんです」

…?どういう意味でしょうか?
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp