第5章 きょうだい 其の壹
「あーあっ20分も待たなきゃいけないんだー」
「手伝い札は手入れ用に貯めておきたいですしね。
20分なんてあっという間ですよ!」
20分て何ができるのか微妙ですよね。
小学生だったかそのくらいの時の休み時間で20分休憩がありましたが、わたしは何をして過ごしていたんでしょう?
「あっあるじさま!」
今剣が駆け寄ってきました。
「ぼく、あるじさまがいなくてひまだったんです!」
「お待たせしちゃったみたいですね、ごめんなさい」
むーっと頬を膨らませる今剣。
「他の二人はどうしたんですか?」
「ゆうごはんをかんがえていたりしています!
もうひとりはてれびで…えっと、よくわからないものをみています」
よくわからないもの?
アニメ以外のものを見ているのでしょうか。
「テレビといえば…夕ご飯を食べる頃にアイドルのアニメがやるんでしたっけ…乱が好きそうなアニメですよ」
「あい、どる…?」
乱は首を傾けます。
「ふりふりした服を着た女の子のアニメです。
録画してもいいですよ」
「ろ、ろくが…?」
さらに首を傾けます。
「清光がよくやってますから、清光に聞いたらわかりやすく教えてくれますよ」
「んー、それじゃあるじさんのことは譲ろうかな。
ありがとー!あっ、顕現するときちゃんと呼んでね!」
乱はリビングの方へ走っていきました。
「あるじさまっ!ぼくとふたりであそびましょう!」
「わかりましたわかりましたっ!
そんなに慌てなくてもわたしはどこにも行きませんよ」
今剣はぐいぐい手を引っ張って急かすので、落ち着けてあげます。
「だって…」
両手でがっちりとわたしの片手を掴んだまま、今剣がうつ向いてしまいました。
どうしたのかとしゃがんで顔を覗きこむと涙を目に溜めて唇を噛んでいました。
「ぼくは、はじめてのかたなじゃないです。
おりょうりつくってあげられません。
おんなのこみたいなの、よくわかりません」
今剣は震える声で話します。
「みためがおさなごだから、おとなっぽくふるまえないです。
かみはながいですけど、おんなのこみたいなかっこうはしていません。
…ぼくは、ぼくは」
ぽたぽたと涙が零れます。
わたしが、泣かせてしまいました。