第3章 半宵の反証
自分にできる限り優しい声で言いました。
安心できないと、そこは『お家』じゃないと思うんです。
「眠れそう、ですか?正直に答えてくださいね」
燭台切は首を横に振ります。
「眠りたくないですか?」
「すごく眠たい…今にも意識を手放しそうなくらい。
でも…どうしても、嫌なんだ」
悲痛な声でした。わたしは燭台切の手を握って言います。
「燭台切が眠るまで、わたしが傍にいます。
どうやったら眠るのが怖くなくなるのか…わたしは眠るのが怖いとき、誰かと一緒だったら安心して眠れるんです。
もしかしたら燭台切も、わたしと同じかもしれません!」
燭台切の手を引っ張って立ってもらいます。
「静かなのが淋しいなら、わたしが何か楽しい話をします。
暗いのが怖いなら、ちょっとだけ灯りを点けてわたしが手を握ります。
甘えたいのなら、頭を撫でたりもしてあげられます。
眠った後は、きっと楽しい夢が見られますよ」
怖くないとわたしは教えてあげないといけません。
みんなが幸せで、笑顔でいてくれないと…わたしは、主なのですから。
「朝が来たら、一番に起きてみんなを驚かせてもいいし、起こされるのを待つのもいいかもしれませんね。
色々考えると、眠るのが楽しみになってきませんか?」
ふわりと微笑んだ燭台切は、頷きながらそうだねと答えてくれました。
「さ!それじゃあ寝ましょうか!」
部屋に着きまして、布団がちゃんと敷かれていて眠ろうとした形跡が見られました。
燭台切を寝かせて布団をかけて、灯りを消してわたしはその横に座ります。
「…主」
部屋の真っ暗闇に溶けてしまいそうな声で、ぽつんと燭台切が呟きました。
「どうしました?」
「夢って、どういうものなのかな?」
おっ、眠ることに興味が…?と、嬉しく思いながらわたしは話します。
「夢は…記憶の整理だとか、色々言われていますね。
その日見たもの、感じたものが、内容は飛び飛びで、順番とか関係なく見たりするんです。
その殆どは朝起きた時には忘れてしまうんですよね。
記憶の整理以外にも、全く見に覚えのない夢を見ることもあります。
無茶苦茶で、うやむやで曖昧なもの、それが夢です」
いざ話そうとすると難しいですね。
何せ、全然覚えていられないものですから…。
「中には怖い夢とか、見たくもない昔のことも、あるのかな」
不安そうに問います。