第2章 夢見る日々はきっと
重力を一切感じさせずとんっとついた片足で滑り台の上までひとっとび。
そのまましゃーっと滑り台を滑りました。
「す、すごいですー!」
自慢げに戻ってきた今剣に拍手を送ります。
「ぼくはてんぐですから!
とんだりはねたりおてのもの!です!」
今剣の身軽さに感心していましたが、今剣がぽふっと抱きついてというか、倒れこんでというか、体重を預けてきたので慌てて支えます。
「ちょっと…つかれたというか、ふらふらします…」
「だ、大丈夫ですか!?えっと、おでこ触りますね」
熱くないです。平熱ですね。
顔色もそんなに悪くは見えません…。
「き、清光っ、どうしましょう…!」
「落ち着いて主!あー…そうだ!
ご飯食べさせたらいいんじゃない?」
「そうですそれです!清光、ご飯ですよ!
お昼ご飯ですよ!」
清光に今剣をおんぶしてもらって、わたし達はキッチンへ駆け出しました。
「どうしましょう清光!
わたし、とても大事なことを忘れていました!」
「えっなに!?」
「わたし…っ、やっぱりお料理はできません!」
包丁を持ったところで冷静になったわたしは泣き出すみたいな声を出してしまいました…!
「そういえばそうだった…!
じゃあいつもの、食ぱんだ!」
清光はちゃっちゃと食パンをレンジに放り込んで、冷蔵庫を開けてジャムを選んでいました。
…わたし、無能過ぎじゃないでしょうか…?
ここまで役に立たないなんて、ある意味珍しくてすごいかもしれませんね。
「ごめんなさい…清光…」
申し訳なくなって、俯きます。
清光ははぁ~と、長く深いため息を。
…呆れられたんじゃ、何もできなくて、世間知らずの常識知らずで…ついに、愛想つかされちゃうのかも…。
「主」
もしかしたら何か言われるかも…、叩かれるかも。
体を強張らせてぎゅっと目を瞑ります。
数歩分の距離を詰められて、彼の手がわたしの頭より上に来て、近付いてきます。
ぐっと衝撃を堪えます。
「…」
…ぽんって、優しく乗せられた手は左右に動かされました。
撫でられています。
あれ?となったわたしは目を開けて彼の顔を下から伺います。
「ごめんなさいって言われるよりも、ありがとうって言われたいんだ。
俺が主に褒められたくて、してあげたくてしたんだから、ね?」
清光は寂しそうな笑顔を向けていました。