第2章 夢見る日々はきっと
小鳥が何かを口遊むのが聞こえて…。
わたしを包んでいた温かい何かが離れて…。
縮こまっている体を、更にぎゅうっと小さくします。
腕の中のぬいぐるみが自分がずっと抱きしめていたからほんのり温かさが…。
耳元で人の声が…安心する声。
そういえば、今は何時…朝?
「もう朝なんじゃっ!」
ばっと上半身を起こしたわたしは、窓の方から殴り込むようにやって来た太陽の光に何度か目を擦りました。
「おはよう主。もう朝だよ」
眠たそうに、ベランダに繋がる窓の前で、やっぱり少し崩れた浴衣姿で清光は立っていました。
「おはようございます…」
多分わたしの頭はぐちゃぐちゃ何でしょうか。
清光の頭は昨日綺麗にしていましたが、やっぱり寝起きって感じの頭です。
「まず朝ご飯にしますか?
それより先に、顔を洗いに行きますか?」
「んー…朝ご飯かな…」
わたしより先に起きたみたいですが、全然まだ夢の中と現実の間くらいにいますね。
「とりあえず下に…」
「おはようございます主さま」
声がした方…というか、わたしの正面に、布団越しでわたしの太ももの上に、狐面みたいにお化粧してるみたいなちょっと太りぎみかなくらいの狐。
さあっと血の気が引いて、体温がすうっと下がって、不愉快な冷や汗が出てきて。
「…っ、ひああぁあぁああっ!」
何とも間抜けな悲鳴が上がっています。
というか、わたしの悲鳴でした。
「突然失礼しました。ベッドの横にいたのですが、全く気付いて頂けなかったので…」
わたしは布団から出て、ベッドをベンチ代わりにして座って、この狐をふとももの上に乗せています。
清光は隣に座っていますよ。
「わ、わかりましたから、それはもういいです。
どうして朝からここに来たんですか?」
「部屋の前に主さまの荷物を送ったのと…それから本日は、主さまに初めての鍛刀と刀装を作って頂くので、説明はしましたがこんのすけの仕事ですので…」
この狐忙しいですね。
ただの動物をこき使っている政府に、ちょっとだけ世も末なんて思ってしまいました。
「荷物というのはわたしのだけですか?」
「刀剣男士の普段着等は深夜の間に届いていますよ。
眠っている頃くらいにベッドか布団かの横に」
「主、これかも」
座っている方の反対側に大きな箱が。
何着か一緒に入っているのでしょう。