第1章 空気と同じ透明から
「ここからあそこまでが全部お手洗いで、一番あっちの方は女子用らしいので、間違えないように!
次は2階ですね!2階は個人のお部屋で、散らかさないように綺麗に使いましょうね!」
ご飯を終えて、お皿も洗い終わったわたし達はこの広すぎるお家の中を歩いています。
狐に言われたことを多分ほとんどそのまま清光に教えていっています。
「この家、すごく大きいよね…俺達二人だけしかいないのに。
何だか淋しい家だね…」
階段を上っている途中、そう清光が呟きました。
わたしは階段を駆け上って、上りきったところから後何段か上らなくちゃいけない清光に言いました。
「確かに、どこもかしこも空白だらけで、とっても淋しいお家です。冷たくて、雑音の1つもしなくて、お家だとはとても思えません…でも」
一度深呼吸して、わたしは続けます。
「これからは、あったかくて、どこからも幸せそうな笑い声がして、そして自分も笑顔になれるような…そんなお家にするんです!
きっとすぐそうなりますから!」
清光はトントンと階段を上って、そうだね、と笑いました。
あっでも、わたしはあくまでもさにわで、政府に言われて、清光に会うまではただお家が、家族のいるあったかいお家が欲しいってだけで行動してて、他の人の事情とか、全く考えてなくて…酷いやつ、なのに、何言ってるんでしょう。
「わたしは、戦わせるために呼んだような酷いやつと思われちゃうかもしれませんがっ、わたしは清光のこと、これから来てくれる人のこともきっと、とっても大好きですから!
だからっ、その、ええっと…!」
言葉が出ないです…!
かっこいい感じのことを言いたかったのに…!
清光は言葉に迷ってしまったわたしの頭を撫でて、優しく微笑んで、力が入っていたわたしの両手を清光の両手で包んでくれました。
「俺は、俺達は武器なんだから、いい主に使ってもらえるのが一番の幸せなの。
主に使ってもらえるなら、本当に幸せだから。
俺達のことを大切に思ってくれる人がいる、帰りたい場所がある…俺はすっごく幸せ。
だから主、きっとここを、主が言ってくれたようなあったかい家にしようね」
「…!」
心の奥が、すっごくあったかくて、不安とか、寂しさとか全部が、溶けていくみたいです。
「はい!」
わたしはこの感謝が全部伝わりますようにと、心を込めて返事をしました。