第1章 空気と同じ透明から
テレビ台?と言えばいいのですかね。
その上の、テレビの横にリモコンが…テレビのリモコンだけじゃなく、この部屋の電気のリモコンやエアコンのリモコンなんかもありました。
わたしはテレビのリモコンを手にとって、電源ボタンを押しました。
「板の中に人!?」
夜のニュース番組がつきました。
…ここにいる限り、あまり必要な番組ではありませんね。
むしろ、クイズ番組の方が知識が増えて、勉強になるくらいですよ。
「これはあまり必要じゃないですけど…。
天気予報や、今世界で何が起こっているのかを教えてくれるんです。
でも…この場所のこととかはこの番組の専門外、とでも言うんでしょうか?
だからあまりためにならないです」
「へー…そのボタンを押すとてれびの中に人が入るの?」
「いえ、これは別の場所にいる映像がここまで送られていて…なんと説明したらいいんでしょう…。
カメラという機械が見ていることが、他の色んなところでもテレビで見られるようにしてる?という感じですかねぇ…」
テレビは、『すごい板』という結論が出ました。
そうしたところでわたし達は色んなチャンネルを見てこども向けのアニメに留まりました。
清光のパンに、持ってきたスプーンでいちごジャムをたっぷりつけてあげて、わたしは蜂蜜をつけました。
「これ甘くて美味しい!主のやつも美味しそう!」
ただの食パンに、ただのジャム。
こっちの蜂蜜もただの百花蜜ですが、こんなに興味津々で楽しそうに食べる人は初めて見ました。
わたしは口をつけていないところをちぎって、清光に差し出します。
「ちょっとだけ、どうぞ」
「いいの?じゃあ…」
清光は一口分のパンを受け取ると、色んな方向から眺めてみてから、ぱくっと食べました。
目をきらきらさせながら噛んで、飲み込むとそれはもう、とびっきりの笑顔で。
「おいしかった!ありがとう主!
これなら毎日食べても飽きない!」
「それはよかったです!
あ、そうそう、ご飯を食べ終わったらこのお家の中を軽く案内しますね!それから清光の部屋を決めましょう!」
「うんわかった!」
ただの食パンなのに、どうして、なんでこんなにもおいしいんでしょう。
たまにテレビの方を見ながら、清光とお喋りして食べる夕ご飯の時間は、とっても幸せでした。