第1章 空気と同じ透明から
夕ご飯の用意…。
お風呂ですっきりしたわたし達は、次はお腹を満たそうと台所へやって来た訳です。
それがわたし達にとって、これほどまでの難関になるとは…。
「あ、主、絶対やめた方がいいよ?」
「でもでもっ!朝ご飯じゃないんですよ!?
食パンにジャムとかバターとかマーガリンとか、蜂蜜やメープルシロップとかもありますが、それをつけただけの夕ご飯なんて…!」
そう…料理が、できません。
「明日になったら一緒に出掛けて料理の本買えるんだから、無理して食材をダメにしなくても…」
「でも…」
「俺はこの…食ぱん?に、このきらきらしたのつけて食べてみたいし、ね?」
清光はいちごジャムの瓶を手に持って言いました。
わたしが不甲斐ないばっかりに…!
清光は知識自体はあるらしいのですが、人の体の使い方にまだ慣れないみたいで無理そうだったので、ここはわたしが!と、なる筈だったのに…。
「ごめんなさい…」
「気にしなくていいよ?
そうだ、明日は一緒に料理しよっか」
「はい…!きっと上達して、清光においしいご飯を毎日作りますね!」
そんな会話をしながらわたしは2枚の食パンを電子レンジに入れて、ボタンを押しました。
わたしの知識もですが、清光が持っている知識の偏りも不思議ですね。
料理はできるけれど、食パンやジャムや、チーズとかも知らないなんて。
「こんな箱に入れてボタンを押すだけで食ぱんが焼けるんだ…」
「電気ってすごいですよね…」
わたし達は電子レンジの中でパンが焼かれる様をじっと見つめていました。
そして、チーンという出来上がりの音。
「わっ、できたの!?」
清光は猫が驚いた時みたいな反応を見せました。
「ふふー完成ですよー!
清光、お皿取ってください」
作業台にジャムやら何やらと一緒に用意していたお皿を清光に持ってもらって、食パンをぱぱっと移動させます。
レンジのコンセントをちゃんと引っこ抜いて机の方へ。
机はとても長く30人なら余裕で座れますね。
テレビがすごく大きくてまるで映画館みたい!
話を盛りすぎましたね。映画館のスクリーンよりは全然小さいです。
「清光!折角なのでテレビを見ながら食べましょう!」
「てれび?あの黒い板のこと?」
「あれはただの板じゃあないんですよー…」
料理の時の落ち込みはどこへやら。
自慢気なこどものようなわたしが、ここにいます。