第5章 2人の距離 5
「うちのさー。事務所の許可降りそうなんだわ。」
グイッとビールを飲んだ後にそう言うと、マジで!!と凄く嬉しそうな顔をする空ちゃん
何のことだかわからないと言う顔をするマネージャーに軽く話すと、えっ⁈と立ち上がりすぐさま座り直した。
「そんでさ。そっちでも話通しといてよ。もしかしたらフライングでうちの社長勝手に日取りとか決めちゃう様な人だから」
つまみを頬張りながらそう言うと、わかりました。と何故かマネージャーが張り切る様に言うので、よろしくお願いします。と頭を下げた
それからは由梨にバレない様に色んな人が動いてくれていた。
意外とすんなり受け入れてくれた社長は先輩方から実は少しアプローチがあったらしい。
つまり俺が言う前から何となく知っていた訳ね。
あれから数週間がたったある日、遅くに家に帰ると由梨の気配はあるもののリビングの電気は消えていてシャワーを浴びて寝ているだろう寝室まで行くと、ヴーッ。と唸る様な声がした。
何事かと思い近づくと震えながら唸る由梨
「由梨?」
呼びかけても返事は無くて身体を揺さぶるとゆっくりと目を開けた。
「だいじょっ、、」
大丈夫か?と聞こうとしたら突然抱きついてきた。
バランスを崩しそうになるのをなんとか堪えて抱きとめゆっくり背中を摩る
何も言わない由梨に、夢?と聞いた。
目を瞑って呼んでも反応がなかったから多分悪夢でも見たのだろう
うんうん。と頷くだけの由梨をそっと横にして俺もその隣に潜り込む。
顔を見せない様にかしっかりと俺に抱きついている由梨の頭をそっと撫でた。
「和さん。今帰りですか?」
落ち着いたのかそう聞かれ、うん。とだけ答えると、お帰りなさい。と言われたので、はい、ただいま。と答える
そして俺と目を合わせたと思ったら顔が近づいて来て気づいたらキスされていた。
「何か、あったの?」
いつもの由梨じゃない事は明らかだしあんなに魘されていたのも初めて見た
質問した瞬間ビクッとなるその姿は昔見たことあるもので。
そう。初めて彼との事を知った時みたいに。