第1章 2人の距離
えっ?!
思わずビクッ。として再度トイレの方を向くと神崎ちゃんは居なくなっていて代わりに男物のリクルート鞄が置いてあった。
え、。
どうしたら良いのよ。これ。
暫くフリーズしておずおずと鞄に近づくとトイレの中から、いたっ。と言う声が聞こえた。
なんだ?と思って咄嗟にノブに手を掛けたが電話のコール音と男の声が聞こえてやめた
あー。そゆことね。
時間かかるならタバコでも吸いに行くかな。
そんな事を思って離れ踵を返すとバンッと扉が開く音がして俺の横をまた風の様に横切る男
「うわっ。」
思わず声を上げたがすでにそいつは居なくなっていた。
いや、なんなのよ。いったい。
思わずそう呟きトイレの方を見る。
あそこ。いんのかな。
多分、いたっ。て声は神崎ちゃんな気がする
あの状況で前にいた神崎ちゃんが急に居なくなったって事はあの無駄に足早な男がトイレに連れ込んだろうな
急に少し恐ろしい事を考えてしまった。
いやいや。ドラマじゃあるまいし。
神崎ちゃんが倒れて居ないか心配になりドアノブに手を掛けた。
「「あっ」」
思わずハモってしまう声
ドアは難なく開き神崎ちゃんは微妙な顔をしていた。
チラッと首元を見ると赤くなってるのがわかる。
は、歯型っ?!
いやいや。どういう状況よ。これ。
出来るだけ見ないようにまた神崎ちゃんの顔を伺うとまずいって顔をして首元の洋服を正し、すみません。と言い俺の脇をすり抜けて行こうとしたので咄嗟に腕を掴んだ
「…なんか、さ。出る気なくしちゃった」
なんでこんな事言ったのか正直わからない。
元々例のサラリーマン系の男の登場から俺の尿意は全くと言って良いほど引いていたし、ちょっと面倒だなとも思ってる。
「…はい?」
まぁ、そうなるよね。
暫くフリーズした神崎ちゃんは、そうですか…。と当たり障りのない返事をした。
それは仕事では明るかった神崎ちゃんとは違って冷たい言い方だった。
「ちょっと付き合ってくんない?…これ。」
そう言って指を2本合わせて口に当てたり離したりした。
それでも引かないで喫煙所に誘う俺に渋々と言った感じで付いてくる